(以上,甲11,原告A本人)
エ所有権移転登記と本件贈与税の申告の経緯
(ア) そして,平成11年4月1日付けで,本件土地につき,?大正▲年
▲月▲日家督相続を原因とするEからGに対する所有権移転登記,?昭
和45年月日不詳贈与を原因とするGからHに対する所有権移転登記,
?平成▲年▲月▲日相続を原因とするHからIに対する所有権移転登記
が各経由され,更に平成12年4月20日,本件土地につき,IからJ
に対し,同月19日売買を原因とする所有権移転登記がされた。
(イ) Iは,平成12年3月8日,広島西税務署を訪問し,「贈与による
財産の取得の時」に関して,同署職員から相続税基本通達1・1の2共
一7(2)及び同基本通達1・1の2共一10に基づく説明を受けた結果,
本件贈与税の申告を行った(乙1)。
(3) 上記(2)の認定事実を基に判断する。
ア(ア) 本件土地については,Gが家督相続により所有権を取得したものの,
Hが固定資産税等の公租公課を負担したほか,地代・賃料等の対価を支
払うことなく占有,使用し,同地上の建物でGとHの実母Kと同居生活
を営んできたものである。
(イ) このような本件土地の利用関係の背景には,Gが,横浜市内の自宅
において妻と同居生活を営み,会社勤務や会社経営等の仕事をしていた
一方,Hが実父Eの家業を承継したという事情があり,Hが,昭和31
年Kの死亡後も,上記と同様の利用を継続し,昭和42年に本件新建物
を新築所有するに至り,昭和45年には,本件新建物の敷地の一部であ
る本件隣接土地を買い受けたこと,他方,Gは,Kの存命中から,横浜
市内に自宅の土地建物を所有していただけでなく,不動産管理会社を経
営し,所有不動産の売却等による収入もあったことから,Hに対して,
その事業資金や本件土地上建物新築の際の資金について援助を行うなど,
経済的余裕を有し,Hとの兄弟関係も良好であったことが認められ,こ
れらの事実からは,GがHに対して本件土地を贈与するだけの十分合理
的な動機が存したといえる。
(ウ) 加えて,Gの遺言書に,目的財産として本件土地は記載されていな
かったこと,G死亡後,その相続税申告書にも,遺産として本件土地は
記載されていなかったことは,Gが不動産管理会社も経営し,自己所有
の不動産の登記済み権利証については銀行の貸金庫に保管していたこと
(原告A本人)とも考え併せると,G又はその相続人である原告らの側
において,上記遺言書作成又はGの相続開始直後の時点では,本件土地
を所有しているという認識を有していなかったことを裏付けるものとい
える。
イ(ア) なお,Iが納税申告を行ったのは,税務署職員の指導を受けてのも
のであり(前記(2)エ(イ)の事実),明確な理解や考えに基づいて行った
ものとまでは考え難く,本件贈与契約の当事者又はこれに直接立ち会っ
た者ではないことから,本件贈与税の申告において,本件土地を取得し
た年月日を平成11年4月1日としたことは,本件贈与による財産の取
得の時期を特段裏付けるものではない。
(イ) 被告は,原告ら代理人の広島西税務署長に対する平成16年5月1
7日付け申入書(2)(乙26)添付の,本件隣接土地のもと所有名義人で
あるS作成とされた手紙に,以前,Hの代理人と名乗る人から,本件隣
接土地の「購入代金はすでに支払済みなのに所有権移転の手続きが完了
前に死亡(S▲.▲.▲日)なのでこの度是非われら兄妹の承諾を得て
移転の手続きを完了したいとの」申入れがあり,これに応じた旨の記載
があり,これによれば,Hは,遅くとも昭和▲年▲月▲日にUが死亡し
たころまでに,同人から本件隣接土地を購入し,代金を支払っていたこ
とがうかがえるから,昭和45年に,Hが,本件隣接土地購入資金の援
助を依頼したとの原告Aの陳述は,信用性に欠ける旨指摘する。
しかし,被告の引用する上記手紙は,本件隣接土地のもと共有者が一
方的に作成したもので,その正確性を直ちに判断することができないも
のである上,原告Aの上記供述は,HがGに対して資金援助を求める際
の理由として述べたところを聞いたというものであり,その性質上,必
ずしもHの話した内容が厳密に事実と合致するとは限らず,前記(2)認定
の他の諸事実に照らすと,上記部分の真偽によって前記認定が左右され
るものではないというべきである。
ウ以上に検討したところによれば,前記(2)の冒頭でみた原告Aの供述は基
本的に信用することができ,これらを総合すれば,Hにおいて,本件隣接
土地を購入したとみられる昭和45年中には,本件土地につき,贈与によ
り所有権を取得したと認めるのが相当である。
そして,上記贈与契約成立の当時,Gは,本件土地から遠く離れた横浜
市において生活を営み,受贈者であるHにおいて,既に本件土地上及び本
件隣接土地に本件新建物を所有してこれに居住して生活の本拠として,本
件土地を占有していたことからすると,上記贈与契約の締結と同時に,G
からHに対して意思表示による簡易の引渡し(民法182条2項)がされ
たと認めるのが相当であり,これにより贈与契約の履行がされたというこ
とができる。
(4) したがって,本件土地の贈与による取得の時期に関し,本件贈与税の申告
の内容とは異なり,Hにおいて昭和45年に贈与によりそのころ財産を取得
したと認められるから,本件贈与に基づく贈与税の連帯納付義務は時効によ
って消滅したものということができる。
2 よって,争点(2)(連帯納付義務の違憲性)について判断するまでもなく,原
告らの各請求はいずれも理由があるから,これらを認容することとし,主文の
とおり判決する。